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Q45  ユダヤ人の一生  5)葬式

【レウットの答え】

やっぱり、結婚式の正反対という印象ですね・・・。
残念なことに「ユダヤ人の一生」を順番に追っていくと、祝日と自分の子供の儀式(前に説明したブリット・ミラ/ブリッター、と、バー/バット・ミツバ)を別にすると、結婚式の次の儀式は、葬式になってしまいます(二つの儀式の間に経つ時間が長いことを希望しますね・・・)。


<埋葬の仕方>

聖書によると、故人は死後24時間以内に埋めなければならないということです(もちろん、場合によっては、24時間以内に埋められないこともありますから、例外についてのルールもあります)。もともとユダヤ人は死体を棺に入れないで、布で巻いて土葬しました。時間が経てば経つほど、ユダヤ人が世界の国々に離散して、それぞれの国の文化にも浸りましたから、そういった国々では棺で埋めることもあります。しかし、イスラエルでは今でも普通に白い布で巻いたまま、死体を土葬しています。

信仰において、イスラエルの土地は神聖ですから、死者が直接聖地に触れるのを棺でじゃましないように、布だけで埋葬するのです。他には、聖書に「キ・アファー・アタ・べエル・アファー・タシュ−ブ」=「あなたは、ちりだから、ちりに帰る」((旧約聖書、創世紀、第三章)と書いてあります。一つの解釈によると、人間は土地で栽培されている植物と、その植物を食べる動物を食べているので、それをきっかけに、人間と土地は一つになります。亡くなると土に戻る、もしくは、また土と一つになるので、もしかしたらそのために、土地に触れるように棺を使わないで埋葬しているのかもしれません。

死者を巻く布はヘブライ語で「タハリヒン」と言います。今はたいてい麻で織られた白い布ですけれども、昔はそうではありませんでした。お金持ちはビロードといった高くて豪華な布を使ったのに対して、貧乏な人々は粗末な布しか買えませんでした。貧富の差は死においても表れてしまっていたのです。けれども、生前にいくら富給であったとしても、神様から見れば、人は皆平等です。それで、ある時期から全ての死者を、区別をしないで白い麻布で巻いて、埋めることになりました。なぜ白い麻になったかというと、白が純粋を表す色で、麻が質素な布地だからです。

また、イスラエル国外でも、このように昔からのイスラエル式のやり方で埋葬することもあります。それは、イスラエルの聖地ではなくても、土には力があると考えられているからです。

一方で、イスラエル国内でも、棺に入れて、埋めることがあります。例えば、亡くなった兵士をイスラエルの国旗を巻いた棺で埋葬しています。また、前の総理大臣や、大統領など、イスラエル国家にとって重要な人物が亡くなった時にも、特別に敬意を表すために棺を使っています。

ユダヤ教では、火葬や、肉親を同じ墓に埋める習慣はありません。・・・日本とに違いますね。ただ、夫婦が隣同士の墓に埋められることはよくあります。そのために、あらかじめそういう二つの墓を買っておく夫婦もいます。


<葬式の仕方>

故人に対して最後の敬意を表すために、遺族や友達や知人といったいろいろな人々が葬式に参加します(日本と同じように新聞に知らせを掲載しています)。葬式に行くのは「最後の道で見送る」と言うヘブライ語の表現があります。同じ考え方から、葬式は「ハルバヤ−」といいます:「見送り」という意味に近いです。

葬式では、死体を埋葬しながら、ラビが祈りを挙げます。その中では、一般的なユダヤ人であれば一応暗記している「カディシュ」という祈りも唱えられます。これは非常に大切な祈りで、私も葬式というとすぐカディシュを連想するほどです。カディシュとは、もともと神様の巨大さをたたえる祈りですから普段もよく唱えられているのですが、多分一番目立ち、また一番有名なのは葬式の時です。その時は死者の"魂を上げる"ために唱えます。

ここで「魂を上げる」というのは、死者の魂を天国に上げるという意味です。ユダヤ教には、人は亡くなってから天国に入るという信仰があります。ただし、ユダヤ教の天国とは、宗教的かつ精神的に優れている人だけが行ける所です。キリスト教の天国のイメージとは違って、人間的な要素があるずっと楽しんでいる所という意味ではなく、ただ神様の光輝の中にいるという意味。

他の祈りと違って、捧げる人はラビではなくて、亡くなった人の肉親です。故人が高齢の場合は、その長男がカディシュを言います。その場合は、最後に「孤児のカディシュ」という祈りで言い終わります。逆に、故人が若い場合は、そのお父さんがカティシュを言うことになります。また、年をとっていても子供がいなかったら、そのお兄さんがやります。哀愁に浸った祈りです。

カディシュ以外にも「エル・マレ・ラハミム」という有名な祈りがあり、いつも唱えます。たいていラビは歌います。それというのも、ユダヤ教では祈りは、ただ読むことだけではなく、歌うものでもあるからです。これを「ハザヌット」と言います。(この"歌い方"は出身によっても違ってきます。ヨーロッパから来たユダヤ人の唱え方とモロッコとかリビアから来たユダヤ人の唱え方は全然違います。そのため、別々のシナゴーグもあります:アシケナジムのシナゴーグと、エドト・ハミズラーのシナゴーグ:スファラディムのシナゴーグ。民族の部分にもっと詳しく書いてあります)「エル・マレ・ラハミム」とは「慈悲深い神様」という意味です。この祈りをするのは故人の魂を安らかに永眠させるためです。悲しいことに、この祈りもイスラエル人の過半数はよく知っています(私でさえも歌えます・・・)。


<葬式の後>

遺族は、葬式の日から7日間、故人の家に泊まって、哀悼しています。この習慣は「シブアー」といいます:表向きは「7つ」という意味ですが、もう一つ意味として、この7日間の哀悼の時期を指します。

聖書の時代、哀悼を表すのにいろいろなことをしました。着ている服を破ったり、頭の上に砂をかけたり、髪の毛を切らなかったり、ヒゲを剃らなかったりしていました。こういった習慣の中には、現代にも残っているものもあります。
敬虔なユダヤ人はまだ服を破ったり、砂を頭にかけたりしています。でも、敬虔なユダヤ人ばかりでなく、普通のユダヤ人も過半数は髪の毛も切らないし、男性はヒゲも剃らないし、女性は化粧もしません。それで、ふとヒゲを生やした知人に会ったりすると、肉親を亡くして哀惜しているのかもしれないと見当をつけることができます。

このように哀悼の気持ちを示しながら、遺族は故人の家でシブアーを過ごします。とても感動させる習慣だと思います:葬式の後の7日というのは、故人を失った痛みが一番新鮮な時ですから、一番辛い時期だとわかって、遺族がゆっくり哀悼できるように、まるで神様から拝領したみたいにこの7日間が与えられました。シブアーの間は弔問客が来ます。遺族と共感したり慰めたり支えたりするため、そして故人に哀悼の意を表すためです。遺族が哀悼に浸れるように、弔問客はたいてい食べ物や飲み物も持って来ます。皆で故人について話したり、いろいろな思い出を述べ合ったり、写真を見たり、泣いたりして過ごすのです。

シブアーの7日が終わると、また墓地に行って、祈りを挙げ、カディシュとエル・マレ・ラハミムをもう一度唱えます。

その後さらに30日が経つと、また墓場に行きます。この時になってやっと墓を立てることができます。つまり、死後24時間以内埋めないといけなくても、30日間が経たないと、墓を立てられません。ですから、その間に墓場に行くと、埋めた所は小さい土の丘のように見えます。そしてまたヒゲを剃ったり、化粧をしたり、髪の毛を切ったりする日常生活に戻ります。

どのような墓を立てるか、どの石で作るか、何を書くか、どの形に作るかは家族次第です。けれども、多くの墓には「ダビデの星」の形が見られます。ダビデの星は特別な6つの角がある星で、ユダヤ教の一つの象徴です。したがって、ユダヤ人の墓にはダビデの星を載せているものが多いです。日本人はあまり気付かないかもしれませんが、実は日本でもよく見られます。アクセサリーや布地に使っている例をよく見かけますが、どうやら日本人はただ単にきれいな形だと思っているようで、ユダヤ教の象徴だと意識していないのかもしれません。

わざわざ墓の形まで描写したのは、兵士の墓は目立つほど他の墓と違うからです。
イスラエルにも、一般の人々の墓地とは別に軍隊の墓地があります。戦闘で亡くなった兵士に限らず、任務中に亡くなった人は軍隊の墓地に埋葬されます。これは選べることではなく、法律によることです。兵士の墓は全部そっくりで、いつ亡くなったかに関わりません。例えば、独立戦争で亡くなった兵士と、一ヶ月前に亡くなった兵士の墓は同じパターンで作られます。つまり、墓の形や、墓に書いてあることなどはいつも同じ柄です。故人の家族は、いくら自分たちで決めたくても無理です。(私の従兄弟が軍隊で亡くなった時も、叔母と叔父は彼の墓石にもう一文書き加えたかったのですが、墓の均一性を損なうということで許してもらえませんでした)。

イスラエルの軍隊の墓地は、大変悲しいことに、とてもきれいです。建築もとてもきれいだし、公園みたいに花がたくさん咲いているし、心を込めて維持されている気がします。普通の墓地とは全然違って、入ったとたんに目を引くような美しさを感じます。

一般の墓地に行くと、墓の過半数は高齢または自然に亡くなった人の墓で、遺族は毎年の明日にだけ訪れます。一方、軍隊の墓地の過半数は若者の墓です。若くして亡くなった人の墓ですから、多くの未亡人や子供を失った両親は、命日だけでなく、少なくとも一週間に一回は訪れます。子供の魂はもう墓地にはないと分かっていても、行かずにはいられないのでしょう。墓の周りに愛をこめて花をいっぱい生けたり、花を植えたり、墓をきれいにして、子供の世話の代わりに墓の世話をしています。そのため、軍隊の墓地の素晴らしい美しさは心を突き刺してなりません。

墓を立てると、死に関わる一連の儀式と習慣が終わり、元の生活に戻ります(これが、一番難しいことだと思います・・・)。

毎年の命日には、遺族や友人は墓にお参りに行き、その度カディシュを唱えます。ちょっと日本の法事に似ているような気がします。もともとは愛する人の死という辛い事情のために集まるのですが、久しぶりに親戚に会えて、一緒に楽しい時間も過ごせるようになります。

兵士とテロの被害者の場合、命日だけでなく、国の記念日にもお参りします。イスラエルには毎年独立記念日があります。イスラエルの独立を祝っているので、とてもにぎやかで、幸福な日ですが、その前の日は亡くなった兵士とテロで殺された市民を偲ぶための記念日があります。もともとは、兵士を偲ぶ記念日だけでしたが、歴史の流れとともに、テロ事件で命を落とす人が大変増えてきました。彼らも国のために犠牲者になった人々ですから、両方とも記念日にすることにしました。

この日は前の晩から始まって、イスラエルの国中でサイレンが一分ぐらい鳴っています。その間、皆がじっと立って、国のため命を失った人に敬意を表しています。とても意味深いサイレンなので、国民は全員で偲んで立っています。運転中なら、車を横に止めて、車の外でじっと立っている姿も見られます。それから、エルサレムにある一番大切「ハー・ヘーツル」というな墓地で国の記念セレモニーを行います。この様子はテレビでも放送されます。ハー・へーツルは、歴代の大統領や首相といった、国に大切な貢献をした人が埋葬されています。そもそも、墓地の名前は「ヘーツル氏」という意味ですが、彼テオドル・ヘーツルは「ユダヤの国」というアイディアを予知した人物です。彼の必死の活動のおかげで、初めて世界の国々はユダヤ人が自分の国を設ける必要があるということに気がつきました。一般的にイスラエルの創立者だと思われています。

このサイレンの後に、記念日が始まります。テレビでは記念の番組だけが放送されて、イスラエルは国中がとてもおごそかな雰囲気に包まれます。

翌朝にもう一度サイレンが鳴ります。国民は皆またじっと立って、軍隊の墓地を始めとして、学校やいろいろな記念館などで記念のセレモニーを行います。墓地にも行きます(大臣や議員も、象徴的な軍隊の墓地に行きます)。セレモニーでは、いつも悲しい追悼の歌を歌ったり、詩を読んだり、悲しいダンスをしたりして、聞く側は泣かずにはいられません。

記念日というと、イスラエルの他の大事な記念日はホロコースト記念日です。この日にもイスラエル全国にサイレンが鳴って、皆がじっと立ちながら、犠牲者のことを考えています。そして、学校でホロコーストのことについて話して、全国的にセレモニーを行います。前の夜にも大きいテレビで放送されているセレモニーを行います。このセレモニーは「ヤッド・バシェム」、エルサレムにあるホロコーストのとても大切な記念館で行って、その時から記念日が終わるまでテレビでホロコーストについての番組を放送しています(犠牲者の話や、歴史的なドキュメンタリーなど)。毎年のことなのに、毎年新しい今まで知らなかった話を聞いて、なんとも言えぬ大変です。聞けば聞くほど、ホロコーストのことが全然分からなくなります。

他の記念日と違って、ホロコースト記念日には、過半数の人は墓地に行きません。ホロコーストで両親や親戚を失った場合は、亡くなった日も墓の場所も分からないので、お参りすらできない人がとても多いです。

墓地と家で「ネー・ネシャマ」=「魂のロウソク」をつける習慣もあります。このロウソクは丸くて白い特別なもので、死者の命日とホロコストの記念日と(後でもっと長く書きます)兵士とテロの犠牲者の記念日に、“死者の魂を上げる”(天国に魂を送る)ために火をともします。多くの墓には、このネー・ネシャマを入れるための小さい空間が作ってあります。

ユダヤ教にはリインカーネーション(転生)とか、死後に別の世界などで別の命が始まるというような文化がありません。しかし、魂が永遠に存在するという信仰もあるし、「万人の復活」という信仰もあります。
メシア(救世主)が現れる日が来ると、世界にやっと平和が訪れ、人間は他の人間を支配することをやめて、世界中から飢えがなくなり、いろいろな奇跡が起こるとされています。その中には死者がよみがえることも含まれています。





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